全国救護施設協議会 平成23年度事業報告 T.基本方針  本協議会は、平成19年4月『救護施設の機能強化に向けての指針』をとりまとめて以来、 救護施設の利用を希望する方あるいは地域社会等からの期待に応えられる救護施設である ために、これまで果たしてきたセーフティネットの役割と、地域生活移行支援機能のいっ そうの強化に向けて取り組んでいるところである。  東日本大震災を受け、わが国では被災地域における対応が喫緊の課題となっている。震 災の影響もあいまって、依然として経済・雇用情勢が厳しい状況にあり、生活保護受給者 の増加につながっている。貧困は人とのつながりの希薄さ、病気あるいは暴力被害などの 二次的な危機状況を生み出しやすい。また、精神科病院の退院者や矯正施設等退所者、ホ ームレス状態に追い込まれた方など、社会的な支援のニーズは益々多様化してきている。  このような時代、救護施設においては入所者の人権を尊重した自立支援のさらなる充実 を目指すとともに、様々なニーズに対して専門性のある支援を提供していく必要がある。 平成22年12月に発表された「全社協 福祉ビジョン2011」では、新しい課題に向き合う社 会福祉法人等の責任と使命が示されており、救護施設においても地域の社会資源としてそ の力を発揮することが期待されている。そのため、保護施設通所事業や居宅生活訓練事業、 ショートステイ事業、居宅生活移行支援事業といった、地域生活移行支援のための事業に も積極的に取り組み、救護施設が地域において担う役割のさらなる拡大を図るべきと考え る。  さらに、震災の被災地域に向けて、関係機関と協力しながら、積極的に支援活動を展開 することが、救護施設が社会に果たすべき役割と考える。  以上を踏まえ、全救協は各地区協議会との連携のもと、平成23年度は次の事業に取り組 んだ。 U.事業の内容 1.「救護施設の機能強化に向けての指針」を踏まえた機能強化の推進 (1)セーフティネット機能強化のための取り組み   @精神科病院退院者、ホームレス等社会的支援を要する方の受け入れと自立支援の推    進     「救護施設の機能を高める研修会」において、精神科病院退院者、矯正施設等退    所者、ホームレス状態にある方への支援に関する講義、分科会を実施し、対象者の    自立支援について理解を深めた。さらに、会報「全救協」にも研修会実施の概要等、    関連する情報を掲載し、さらなる支援の推進を図った。   A様々なニーズや利用者の状況に応じた支援のさらなる充実に向けた、救護施設にか    かる基準等の検討     各地区救護施設協議会からの要望をもとに、制度・予算対策委員会において、平    成25年度の予算・制度要望に向け、救護施設の基準等の改善にかかる検討を行った。   B精神障害のある生活保護受給者等の相談・支援体制づくりの推進     救護施設における精神障害者への相談支援機能の強化を図るために、今年度より、    精神保健福祉士の加配の創設や一時入所について制度改正がなされたことを受け、    「経営者・施設長会議」や「地域生活支援関係事業実施施設連絡会」、会報「全救    協」などにおいて情報提供を行い、制度の普及・活用を図った。     また、会報「全救協」136号にて、精神保健福祉士の加配や一時入所に関するアン    ケートを行い、各施設の実態把握に努めた。 (2)地域生活支援を推進するための取り組み   1.地域生活支援を推進するための取り組み    @地域生活支援関係事業(保護施設通所事業、居宅生活訓練事業、一時入所、居宅     生活移行支援事業)への取り組みの推進      救護施設における精神障害者への相談支援機能の強化を図るために、今年度よ     り、精神保健福祉士の加配の創設や一時入所について制度改正がなされたことを     受け、「経営者・施設長会議」などにおいて、概要の説明等を行うとともに、事     業への積極的な活用を働きかけた。また、平成22年度に創設された居宅生活移行     支援事業についても、会報「全救協」などにおいて事業概要等に係る情報提供を     行った。    A地域生活支援関係事業実施施設連絡会の開催      地域生活支援事業への理解を深め、実施施設および実施予定施設相互の情報交     換を図るために、連絡会を開催した。      期 日;平成23年9月6日(火)      会 場:東京都内・全社協会議室      参加者:105名(全救協:90名、更宿連:15名)      内 容:1)「地域生活支援事業に係る制度の改正点について             〜優仁ホームにおける実践事例を踏まえて〜」            (説明、事例発表ならびに質疑応答)            笈川 雅行(全救協制度・予算対策委員長)          2)事業別討議           @)保護施設通所事業             進行:杉野 全由(連絡会幹事)           A)居宅生活訓練事業             進行:松田 昌訓(連絡会幹事)           B)ショートステイ事業             進行:笈川 雅行(全救協制度・予算対策委員長)          3)全体討議    B「改訂版 地域生活支援関係事業ガイドブック」の発行、普及・活用      平成20年3月に発行した「地域生活支援関係事業ガイドブック」について、平     成22・23年度に制度改正、創設された地域生活支援関係事業の情報等を盛り込み、     改訂した。改訂版ガイドブックは、本会会員施設のほか、更生施設や行政などの     関係機関に配布するとともに、有償頒布を実施した。     (平成23年度有償頒布数:352部) 2.利用者主体の個別支援に向けた取り組みの推進 (1)個別支援計画書の普及・活用の推進     全国厚生事業団体連絡協議会研究会議(平成24年1月開催)の第1分科会「個別    支援計画で支える自立支援」において、守家調査・研究・研修委員長から、全救協    を代表して個別支援計画書にかかる課題提起を行い、各団体からの参加者との意見    交換を図った。     また、計画書普及のために希望する施設への計画書を有償頒布した。    (平成23年度有償頒布数:152部) (2)各地区救護施設協議会における個別支援計画に係る研修の状況把握     調査・研究・研修委員会において、各地区救護施設協議会の個別支援計画に係る    研修の実施状況について実施状況の把握を行った。また、会報「全救協」に各地区    救護施設協議会における取り組みを紹介した。 3.利用者の人権を尊重した支援の取り組みの推進 (1)全救協および地区救護施設協議会における救護施設職員への人権を尊重した研修の    実施     「救護施設福祉サービス研修会」において、「利用者への虐待防止」をテーマに    プログラムを企画。障害者虐待防止にかかる法制度や当事者の視点からの支援のあ    り方などの講義を通して理解を深めるとともに、演習では虐待防止に向けたプログ    ラムの作成に取り組んだ。     また、地区救護施設協議会における利用者の人権を尊重した研修等への取り組み    を広く呼びかけるとともに、会報「全救協」の「ブロックだより」において、各地    区および施設の人権尊重に係る取り組み状況を紹介し、啓発を行った。 (2)各施設における「障害者虐待防止の手引き(チェックリスト)」(全社協)の実施     会員施設に「障害者虐待防止の手引き(チェックリスト)ver.2」を配付し、施    設の全職員が手引きに取り組むよう呼びかけた。 4.リスクマネジメント、サービスの質の評価等への取り組みの推進 (1)リスクマネジメントに対する意識の向上と実践手法の共有     会報「全救協」135号(平成23年2月発行)において実施した、各施設におけるリ    スクマネジメントの取り組み状況にかかるアンケート調査結果の概要について、「全    救協」137号(11月発行)にて掲載し、実践手法等を共有した。 (2)サービスの質の評価に対する意識の向上と実践手法の共有     全国社会福祉協議会 政策企画部が、各社会福祉施設協議会の会員施設を対象に実    施した「福祉サービス第三者評価事業の受審に関するアンケート調査」に協力した。 5.『改訂新版 救護施設職員ハンドブック』の普及・活用  昨年度発行した「改訂新版 救護施設ハンドブック」について、救護施設職員・関係者の 基本書として広く活用いただくよう、「救護施設福祉サービス研修会」などを通して、会 員施設に呼びかけた。また、昨年度に引き続き、希望する会員施設へ頒布した。 (平成23年度有償頒布数:184部) 6.全国大会・研修会等の開催 (1)平成23年度救護施設経営者・施設長会議     期 日;平成23年4月27日(水)〜28日(木)     会 場;東京都内・全社協会議室     参加者:120名     内 容:@行政説明「生活保護の現状と課題」          清水 修 氏(厚生労働省社会・援護局保護課予算係長)         A基調報告 森 好明(全救協会長)         B講義「利用者の人権を尊重した支援のあり方‐知的障害のある人たち          への支援−」          大久保 常明 氏(全日本手をつなぐ育成会 常務理事)         C「地域生活支援関係事業への取り組みの推進について」           説明:清水 修 氏(厚生労働省社会・援護局保護課予算係長)           進行:笈川 雅行(全救協制度・予算対策委員長)              松田 昌訓(地域生活支援関係事業実施施設連絡会幹事) (2)平成23年度救護施設福祉サービス研修会     期 日;平成23年10月13日(木)〜14日(金)     会 場:東京都内・全社協会議室     参加者:121名     内 容:@講義T「障害者虐待防止法の基本理解」          野沢 和弘 氏(毎日新聞社論説委員)         A講義U「施設内における虐待防止を進める視点」          古畑 英雄 氏(かながわ福祉サービス運営適正化委員会事務局次長)         B講義V「社会福祉施設に求めたい人権への配慮」          森 実恵 氏 (ピア大阪相談員)         C演習「利用者への虐待防止をいかに進めていくか」          助言者:品川 卓正(全国救護施設協議会 副会長)          進 行:全救協 調査・研修・研究委員会              委員長  守家 敬子              副委員長 米光 正雄              委 員  越前 典洋              委 員  山田 敏昭              委 員  吉田 和博              委 員  西村 行弘 (3)救護施設の機能を高める研修会     期 日;平成23年11月30日(水)〜12月1日(木)     会 場:東京都内・全社協灘尾ホール、会議室     参加者:175名     内 容:@講義T「社会保障改革の今後」        炭谷 茂 氏(社会福祉法人 恩賜財団 済生会 理事長)         A講義U「救護施設における精神障害者への支援の進め方」          辻 惠介 氏(武蔵野大学 教授)         B講義V「みんなの刑余者支援−よりそいネットおおさか・地域生活定          着支援センターの取り組みを通じて−」          益子 千枝 氏(大阪府地域生活定着支援センター 相談員)         Cテーマ別分科会          第1分科会          「精神障害者への支援にいかに取り組むか」          第2分科会          「矯正施設退所者等への支援にいかに取り組むか」          第3分科会          「ホームレスへの支援にいかに取り組むか」 (4)第36回全国救護施設研究協議大会(関東地区)の開催準備  平成24年9月20日〜21日、静岡県浜松市のアクトシティ浜松において開催することとな った。 7.協議会組織の強化 (1)各地区救護施設協議会組織の活動の促進     全国レベルの活動との連携を強化しつつ、各地区協議会における諸活動の円滑な    運営を図った。また各地区の大会において全救協より中央情勢報告を行い、直近の    情報提供に努めた。    《地区大会開催状況》      北海道地区   6月16日(木)〜17日(金)/北海道函館市      北陸中部地区  7月14日(木)〜15日(金)/愛知県蒲郡市      近畿地区    6月9日(木)〜10日(金)/滋賀県大津市      中国四国地区  6月9日(木)〜10日(金)/岡山県岡山市      九州地区    7月7日(木)〜8日(金)/福岡県福岡市 (2)組織・財政の充実・強化 (3)平成23年度「全救協便覧」の発行 8.広報・情報提供活動の強化 (1)会報『全救協』の発行     社会福祉制度・施策の動向、本会活動、各地区の動向、救護施設における実践報    告、全国大会の概要等について、全国の関係者に広報するため会報『全救協』を発    行した。    《発行状況》      @136号(平成23年7月11日)       特集:@)平成23年度全国救護施設協議会 総会・役員改選報告          A)全国厚生事業団体連絡協議会 平成22年度事業の報告      A137号(平成23年11月11日)       特集:地域生活支援関係事業の推進に向けて      B138号(平成24年3月23日)       特集:全国救護施設協議会主催研修会 報告        (救護施設の機能を高める研修会・救護施設福祉サービス研修会) (2)制度・施策関連情報の提供     障害者福祉制度・施策に関する情報を『障害福祉関係ニュース』により提供した    (計22回発行)。会員施設に対しては、会報の“動向”のコーナーにより、関連制    度・施策に係る情報提供を行った。 (3)全救協ホームページの充実     全救協の事業や救護施設に関する情報提供、会員施設相互の情報交換等に資する    ようホームページの充実を図った。 9.制度・予算対策活動の推進 (1)救護施設をめぐる制度等の改善および予算要望に向けた対応     平成25年度の予算・制度改善要望に向けて、全国救護施設実態調査結果の分析や、    各地区救護施設協議会からの意見の集約等を行った。それらを踏まえ、今後の制度・予    算対策活動の方向性などを協議した。 (2)心神喪失者等医療観察法への対応     「救護施設の機能を高める研修会」の分科会において、矯正施設等退所者への支    援をテーマにしたプログラムを実施した。このなかで、心神喪失者等医療観察法に    かかる状況や触法障害者等への支援の課題等について、事例研究や意見交換などを    実施した。 (3)全国社会福祉協議会・政策委員会との連携     平成22年12月に発表された「全社協ビジョン2011」に示された、これからの社会    福祉施設の使命・役割などについて、各会員施設において具体的な実践を図るよう、    「経営者・施設長会議」や各地区救護施設協議会大会における中央情勢報告などで    呼びかけを行った。     また、森前会長が全国厚生事業団体連絡協議会を代表し、委員として政策委員会    に参画した。 (4)社会福祉法人新会計基準移行への対応     平成24年度より施行される社会福祉法人新会計基準に関して、平成23年7月13日    に開催された事業関係者への説明会には、笈川予算・対策委員長が厚生協を代表し    て出席し、新会計基準の運用にかかる説明を受けた。また、新会計基準の制定にか    かる厚生労働省局長通知の発出後は、各地区協議会等への資料提供や会報「全救協」    への記事掲載などの情報提供を行った。 (5)保護施設最低基準の条例委任への対応     平成24年度より施行される保護施設最低基準の都道府県への条例委任に関して、    各地区協議会等に関連法令等の資料提供や会報「全救協」への記事掲載など、情報    提供を行った。また、制度・予算対策委員会において、条例委任に伴う影響の分析    や各地の情報交換等を行った。 10.調査研究活動の推進 (1)平成22年度救護施設実態調査報告書の発行     平成22年度に実施した全国救護施設実態調査について回答結果をまとめ、報告書    を発行した。報告書は全国の救護施設のほか、関係機関に配付した。 (2)情報収集アンケートの実施と活用     会報「全救協」136号(7月発行)にて、精神保健福祉士の加配および一時入所の    実施に係る調査を実施。調査結果の概要について「地域生活支援事業実施施設等連    絡会」および会報「全救協」137号で会員施設に報告した。 11.東日本大震災に伴う被災地支援等への対応 (1)被災地会員施設への訪問     被災地会員施設等の状況を把握するため、森前会長をはじめ計4名の全救協役員    が福島県および宮城県の会員施設および被災地を訪問した(6月30日実施)。 (2)被災地会員施設への会費免除および見舞金の贈呈     各地区の被害状況の報告を踏まえ、福島第一原子力発電所の事故に伴い、避難を    余儀なくされている浪江ひまわり荘に対し、平成23年度の会費免除および見舞金の    贈呈を行った。 (3)社会福祉施設協議会連絡会・現地支援本部への職員派遣協力     全国社会福祉協議会・社会福祉施設協議会連絡会より、全国厚生事業団体連絡協    議会に対し、岩手・宮城に設置した現地支援本部に、施設職員の派遣協力の要請が    なされた。これを受け、本会から11施設・計13人の職員を派遣し、延べ91人日にわ    たり支援活動を行った。 (4)JDFみやぎ支援本部への職員派遣協力     日本障害フォーラム(JDF)が設置した宮城県の現地支援本部に、本会から32    施設・計57人の職員を派遣し、延べ537人日にわたり支援活動を行った。 (5)被災地支援にかかる情報収集・提供活動     各地区救護施設協議会を通して、会員施設の被災状況等を把握するとともに、各    地区・施設における支援等の依頼や地区内の活動状況の集約などを依頼した。また、    被災地への支援活動等の情報について、会報「全救協」などを通して情報提供した。 V.会務の運営  会務を進めるために、以下の会議を開催した。 1.総会の開催    期日; 平成23年4月27日(水)    会場; 全社協会議室    出席状況: 出席施設数 107、委任施設数 76、欠席施設 2 2.理事会の開催     第1回 平成23年4月27日(水)/全社協会議室    第2回 平成23年8月5日(金)/全社協会議室    第3回 平成23年12月20日(火)/全社協会議室    第4回 平成24年1月26日(木)/全社協会議室    第5回 平成24年3月5日(月)/全社協会議室 3.専門委員会の開催  各委員会活動を積極的に推進するために必要に応じて開催する。 (1)総務・財政・広報委員会     第1回 平成23年6月29日(月)/全日通霞が関ビル     第2回 平成24年2月16日(木)/商工会館 (2)制度・予算対策委員会     第1回 平成23年7月5日(木)/全社協会議室     第2回 平成23年11月15日(火)/全社協会議室     第3回 平成24年2月9日(木)/全社協会議室 (3)調査・研究・研修委員会     第1回 平成23年7月5日(火)/全社協会議室     第2回 平成24年2月15日(水)/商工会館