全国救護施設協議会 平成22年度事業報告 T.基本方針  全国救護施設協議会は、平成19年4月『救護施設の機能強化に向けての指針』をとりま とめて以来、救護施設の利用を希望する方あるいは地域社会等からの期待に応えられる救 護施設であるために、これまで果たしてきたセーフティネットの役割と、地域生活移行支 援機能のいっそうの強化に向けて取り組んでいるところである。  近年は長期間にわたる経済不況により、職や住まいを無くすという状況に追い込まれる 人が相当数おり、ホームレスや生活保護受給者の増加につながっている。貧困は人とのつ ながりの希薄さ、病気あるいは暴力被害などの新たな課題を生み出しやすい。このような 状況に乗じたいわゆる貧困ビジネスも社会問題となっており、支援を要する人の置かれた 状況や支援ニーズは益々多様化してきている。  このような時代、救護施設においては入所者支援のさらなる充実を目指すことはもとよ り、様々なニーズに対して専門性のある支援を提供していく必要がある。保護施設通所事 業や居宅生活訓練事業など、地域生活移行支援のための事業にも積極的に取り組み、今年 度より新設された居宅生活移行支援事業への参画についても地域の実情に応じて検討し、 救護施設が地域において担う役割のさらなる拡大を図るべきと考える。  以上を踏まえ、全救協は各地区協議会との連携のもと、平成22年度は次の事業に取り組 んだ。 U.事業の内容 1.「救護施設の機能強化に向けての指針」を踏まえた機能強化の推進 (1)セーフティネット機能強化のための取り組み   @精神科病院退院者、ホームレス等社会的支援を要する方の受け入れと自立支援の推    進   A様々なニーズや利用者の状況に応じた支援のさらなる充実に向けた、救護施設にか    かる基準等の検討     セーフティネットの施設として救護施設がその機能をどのように発揮するべきか。    救護施設の機能強化に向けては、その中心となる施設長が、時代の動きや施設に対    するニーズを適切に把握しながら、施設の経営・運営を行っていくことが必要であ    る。こうしたことを踏まえ、全国大会の第1分科会では、精神科病院退院者、ホー    ムレス、矯正施設等退所者などの受け入れなどにかかる実践や課題を提起するとと    もに、グループ討議により課題の共通認識を深めた。 (2)地域生活支援を推進するための取り組み   @地域生活支援関係事業(保護施設通所事業、居宅生活訓練事業、居宅生活者ショー    トステイ事業、居宅生活移行支援事業)への取り組みの推進     昨年度末に、保護施設通所事業および居宅生活訓練事業について実施要綱が改正    されたことを受け、「経営者・施設長会議」などにおいて、内容の理解を深めると    ともに、事業への積極的な取り組みを働きかけた。また、無料低額宿泊施設におけ    る支援の充実を図るために新たに創設された居宅生活移行支援事業については、会    報「全救協」などにおいて会員等に情報提供を行った。   A地域生活支援関係事業実施施設連絡会の開催     地域生活支援事業への理解を深め、施設相互の情報共有を図るために、連絡会を    開催した。    期 日;平成22年9月22日(水)    会 場:東京都内・全社協会議室    参加者:72名(全救協68名、更宿連4名)    内 容:1)「地域生活支援事業に係る制度の改正点について」         笈川 雅行(全救協制度・予算対策委員長)        2)「地域生活支援事業の実践報告」         発表者:笠原 正之 氏(救護施設淀川寮主任)        3)事業別討議         @)保護施設通所事業          進行:難波 朝重(連絡会幹事)         A)居宅生活訓練事業          進行:松田 昌訓(連絡会幹事)         B)ショートステイ事業          進行:笈川 雅行(全救協制度・予算対策委員長)         C)居宅生活移行支援事業          進行:大西 豊美(全救協制度・予算対策副委員長) 2.利用者主体の個別支援に向けた取り組みの推進  @個別支援計画書の普及・活用の推進    「利用者主体の個別支援への取り組み」をテーマに、全国大会第2分科会において、   救護施設個別支援計画書を活用した利用者支援のあり方について討議研究を行った。   3施設から実践報告を行い、その後グループに分かれて個別支援計画書導入の成果や   支援計画の実践などについて討議を行った。    また、計画書普及のために希望する施設への計画書の有料頒布を行った。   (22年度有償頒布数:165部)  A各地区救護施設協議会における個別支援計画に係る研修実施状況の把握    会報「全救協」の「ブロックだより」において、各地区救護施設協議会の個別支援   計画に係る研修の実施状況について記事を掲載するとともに、各地区救護施設協議会   に対して研修の実施状況に関するアンケートを実施し、普及に向けた各地の取り組み   状況を確認した。 3.リスクマネジメント、サービスの質の評価等への取り組みの推進  @リスクマネジメントに対する意識の向上    会報「全救協」135号に、各施設におけるリスクマネジメントの取り組み状況につい   て、アンケート調査を実施し、各会員施設における実態を把握するとともに、取り組   みに対する意識の向上を図った。  Aサービスの質の評価に対する意識の向上と実践手法の共有    「サービス等の質の向上に向けての評価への取り組み」をテーマとした全国大会第   4分科会において、実践報告とグループ討議により施設における自己評価や第三者評   価の必要性や意義、実施上の工夫等について検証し、意識の向上と実践手法の共有化   を図った。 4.全国大会・研修会等の開催 (1)第35回全国救護施設研究協議大会の開催     期 日;平成22年10月28日(木)〜29日(金)     会 場;沖縄県那覇市「沖縄ハーバービューホテルクラウンプラザ」     テーマ;救護施設の機能強化のさらなる推進に向けて     参加者:434名     内 容:@基調報告「救護施設の機能強化のさらなる推進に向けて」          森 好明(全救協会長)         A行政説明「生活保護の現状と課題」          三石 博之 氏(厚生労働省社会・援護局保護課長)         B分科会          ・第1分科会「これからの救護施設経営戦略」          ・第2分科会「利用者主体の個別支援への取り組み」          ・第3分科会「地域生活支援への取り組み」          ・第4分科会「サービス等の質の向上に向けての評価への取り組み」          ・第5分科会「利用者のQOL(生活の質)を高める支援」         C特別講演「生活保護受給者への支援に求められること〜救護施設への          期待」          新保 美香 氏(明治学院大学 教授)         D記念講演「琉球のアジア交流と首里城復元」          高良 倉吉 氏(琉球大学 教授) (2)平成22年度救護施設経営者・施設長会議     期 日;平成22年4月27日(火)〜28日(水)     会 場;東京都内・全社協会議室     参加者:131名     内 容:@行政説明「生活保護の現状と課題」          尾山 健司 氏(厚生労働省社会・援護局保護課課長補佐)         A基調報告 森 好明(全救協会長)         B講義「社会福祉をめぐる動向について」          古田 清美(全国社会福祉協議会 高年・障害福祉部長)         C講義「福祉の支援が必要な矯正施設等を退所した高齢・障害者の地域          生活支援の課題 −地域生活定着支援センターの役割を中心として−」          田島 良昭 氏          (社会福祉法人南高愛隣会(コロニー雲仙)理事長)         D討議・情報交換「地域生活移行支援事業への取り組みの推進について」          説明:笈川 雅行(全救協制度・予算対策委員長)          進行:難波 朝重(地域生活支援関係事業実施施設連絡会幹事) (3)平成22年度救護施設福祉サービス研修会     期 日;平成22年12月2日(木)〜3日(金)     会 場:東京都内・全社協会議室     参加者:115名     内 容:@講義T「救護施設を取り巻く社会福祉の動向」          古田 清美(全国社会福祉協議会 高年・障害福祉部長)         A講義U「救護施設に求められる役割」          山村 睦 氏(社会福祉法人天竜厚生会高齢者支援事業部部長/          社団法人日本社会福祉士会会長)         B講義V「統合失調症の基本的理解」          田村 綾子 氏(社団法人日本精神保健福祉士協会常任理事)         C講義W・演習「障害者の権利擁護への理解と虐待防止チェックリスト          の活用」          久木元 司 氏(社会福祉法人常盤会理事長/全国社会福祉施設経営者           協議会・全国青年経営者会会長/全社協「障害者の虐待防止に関す           る検討委員会」委員)          守家 敬子(全国救護施設協議会 調査・研究・研修委員長/全社協「障           害者の虐待防止に関する検討委員会」委員)          真下 宗司 氏(障害者支援施設誠光荘施設長/全国身体障害者施設協           議会 調査・研究委員長/全社協「障害者の虐待防止に関する検討委           員会」委員) (4)第36回全国救護施設研究協議大会(関東地区)の開催準備     平成23年11月17日〜18日、静岡県浜松市のアクトシティ浜松において開催するこ    とを決定し、関係機関への連絡・調整等、開催に向けた準備に取り組んだ。 5.協議会組織の強化 (1)各地区救護施設協議会組織の活動の促進     全国レベルの活動との連携を強化しつつ、各地区協議会における諸活動の円滑な    運営を図った。また各地区の大会において全救協より中央情勢報告を行い、直近の    情報提供に努めた。    《地区大会開催状況》     北海道地区  6月24日(木)〜25日(金)/北海道函館市     東北地区   6月10日(木)〜11日(金)/青森県三沢市     関東地区   7月6日(火)〜7日(水)/東京都中野区     北陸中部地区 7月15日(木)〜16日(金)/富山県黒部市     近畿地区   6月17日(木)〜18日(金)/京都府京都市     中国四国地区 6月3日(木)〜4日(金)/愛媛県松山市 (2)平成22年度永年勤続功労者表彰の実施     第35回全国救護施設研究協議大会開会式(10月28日、沖縄県那覇市)において70    名の表彰を行った。 (3)組織・財政の充実・強化     全救協における資金運用について検討した結果、積立金である運営基金および全    国大会積立金について、平成23年度より定期預金へ移行することとした。 (4)平成22年度「全救協便覧」の発行     会員情報等を更新し、平成22年7月に本年度の便覧を発行。会員施設および関係    機関に配布した。 6.広報・情報提供活動の強化 (1)会報『全救協』の発行     社会福祉制度・施策の動向、本会活動、各地区の動向、救護施設における実践報    告、全国大会の概要等について、全国の関係者に情報提供するため会報『全救協』    を3回発行した。    《発行状況》     @133号(平成22年6月11日)      特集:平成22年度総会報告     A134号(平成22年9月30日)      特集:生活保護制度に関する国の研究会の動き     B135号(平成23年2月10日)      特集:第35回全国救護施設研究協議大会報告 (2)制度・施策関連情報の提供     障害者福祉制度・施策に関する情報を『障害福祉関係ニュース』により提供した    (18回発行)。会員施設に対しては、会報の"動向"のコーナーにより、関連制度・施    策に係る情報提供を行った。 (3)全救協ホームページの充実     全救協の事業や救護施設に関する広報、会員施設相互の情報共有に資するようホ    ームページの充実を図った。 7.制度・予算対策活動の推進 (1)救護施設をめぐる制度等の改善および予算要望に向けた対応     救護施設における精神保健福祉士の加配と、ショートステイ事業の再編(事務費    支弁化)について、厚生労働省社会・援護局保護課に要望を行った。その結果、平    成23年度厚生労働省予算案に新規事業として「救護施設の機能を活用した精神障害    者等の地域生活支援対策」が盛りこまれ、本会の要望に基づき、平成23年度より精    神保健福祉士の加配とショートステイ事業の再編に係る制度改正が行われる見通し    となった。 (2)心神喪失者等医療観察法への対応     法制度について情報収集に努め、動向を注視した。 (3)全国社会福祉協議会・政策委員会における活動との連携     政策委員会幹事会が検討過程で示した「全社協 福祉ビジョン」の「素案」に対    し、全国厚生事業団体連絡協議会(厚生協)の構成団体として、課題点の検証、提    示等に協力し、意見書を提出した。その後、全社協では平成22年12月27日に、各構    成組織の意見が反映された「全社協 福祉ビジョン2011」がまとめられ、公表され    た。 (4)社会福祉法人新会計基準への移行に係る対応     社会福祉法人新会計基準への移行に関して、各地区協議会等に検討状況などの情    報提供を行った。平成22年12月1日に開催された事業関係者への説明会に、笈川予    算・対策委員長が厚生協として代表出席し、会計処理上の疑問点等について意見を    述べた。また、全救協第3回理事会において、移行案に係る必要な意見提出の依頼    を行った。 8.調査研究活動の推進 (1)平成22年度全国救護施設実態調査の実施     全救護施設を対象に、施設および利用者の状況について、平成19年度以来となる    実態調査を実施した。結果については、平成23年度に報告書を刊行する予定である。 (2)「改訂新版 救護施設職員ハンドブック」の刊行     「救護施設ハンドブック」について、昨年度に引き続いて作業委員会を開催して    内容について検討を行い、平成9年以来の改訂となる「改訂新版」として刊行した。    救護施設職員・関係者の基本書として広く活用を図るため、会員施設および関係機    関等に配布するとともに、有償頒布を実施した(22年度有償頒布数:3,298部)。    <作業委員会開催状況(平成20年度からの継続開催)>   (第4回)平成22年5月26日(水)/全社協会議室         ・「救護施設職員ハンドブック」の内容について   (第5回)平成22年7月1日(木)/全社協会議室         ・「救護施設職員ハンドブック」の内容について (3)厚生協「暴力被害者支援のあり方検討委員会」への協力     厚生協が平成21年度に実施した「利用者の暴力被害調査」の結果を踏まえ設置し    た「施設における暴力被害者支援のあり方委員会」に全救協から委員を派遣すると    ともに、支援者を対象とした調査の実施にあたり、会員施設に回答を働きかけた。    同委員会では、各施設が共通して理解しておくべき知識等の整理や支援現場で活用    できる技法の検討などを行い、報告書を取りまとめた。 9.東日本大震災に伴う被災地支援等への対応 (1)被災地域にある会員施設の被災状況の把握     平成23年3月11日に発生した東日本大震災に対応し、東北・関東地区の会員施設    の被災状況の把握を行い、各地区協議会への情報提供を行った。 (2)全国社会福祉協議会・社会福祉施設協議会連絡会が行う被災施設支援への協力     厚生協が参画する全国社会福祉協議会・社会福祉施設協議会連絡会が実施する義    援金募集への協力を会員施設に呼びかけた。     また、同連絡会が岩手および宮城に設置した現地支援本部への施設職員派遣(平    成23年4月以降の派遣)について、各地区協議会への協力依頼を行った。 V.会務の運営  会務を進めるために、次の会議を開催した。 1.総会の開催    期日; 平成22年4月27日(火)    会場; 全社協会議室    出席状況: 出席施設数 110、委任施設数 69、欠席施設 6 2.理事会の開催     (第1回) 平成22年4月27日(火)/全社協会議室         ・平成21年度事業報告案、決算案について         ・救護施設に関する予算要望について         ・総会の運営について         ・第35回全国大会の分科会について    (第2回) 平成22年10月27日(水)/沖縄県那覇市・沖縄ハーバービューホテル                     クラウンプラザ         ・平成22年度事業の進捗状況報告および今後の推進について          * 全救協における資金の管理・運用等について          * 地域生活移行支援関係事業実施施設等連絡会の開催について          * 保護施設の設備及び運営に関する基準の条例移譲について          *「地域生活支援関係事業ガイドブック」の改訂について          *「改訂新版 救護施設職員ハンドブック」の刊行について          * 救護施設福祉サービス研修会について          * 平成22年度全国救護施設実態調査について         ・全国大会の運営について         ・第36回全国救護施設研究協議大会等の開催予定について    (第3回) 平成22年12月10日(金)/全社協会議室         ・事業進捗状況について          * 第35回全国救護施設研究協議大会報告          * 社会福祉法人新会計基準への移行について          * 平成22年度救護施設実態調査の実施について          * 平成22年度救護施設福祉サービス研修会報告         ・平成23年度各地区大会の開催について    (第4回) 平成23年3月4日(金)/全社協会議室         ・事業進捗状況について          * 第35回全国救護施設研究協議大会の決算報告について          * 第36回全国救護施設研究協議大会の企画・運営について          * 平成23年度救護施設経営者・施設長会議について          * 資金管理・運用について          * 平成23年度の制度・予算対策活動等について          * 地域生活支援関係事業ガイドブックの改訂について          * 全国救護施設実態調査について          * 『改訂新版 救護施設職員ハンドブック』の頒布状況について          * 平成23年度の研修企画について         ・平成22年度事業進捗状況および補正予算(案)について         ・平成23年度事業計画(案)および予算(案)について 3.専門委員会の開催  各委員会活動を積極的に推進するために次の委員会を開催した。 (1)総務・財政・広報委員会    (第1回)平成22年6月28日(月)/全社協会議室      ・第35回全国救護施設研究協議大会について      ・会報「全救協」の内容について      ・全救協における資金の管理・運用について    (第2回)平成23年3月2日(火)/全社協会議室      ・平成22年度事業進捗状況及び補正予算案について      ・平成23年度事業計画案及び予算案について      ・第36回全国救護施設研究協議大会について      ・平成23年度経営者・施設長会議の企画について (2)制度・予算対策委員会    (第1回)平成22年7月8日(木)/全社協会議室         ・緊急一時保護に関する調査の実施について         ・平成22年度「地域生活支援関係事業実施施設等連絡会」の開催につい          て    (第2回)平成22年10月19日(火)/全社協会議室         ・地方自治体への条例委任に伴う課題等について         ・「地域生活支援関係事業ガイドブック」の改訂について    (第3回)平成23年2月21日(月)/全社協会議室         ・「救護施設の機能を活用した精神障害者等の地域生活支援対策」(平          成23年度新規事業)の概要と今後の予定等について         ・平成23年度事業計画(案)について         ・「地域生活支援関係事業ガイドブック」の改訂について (3)調査・研究・研修委員会    (第1回)平成22年7月14日(水)/全社協会議室         ・第35回全国救護施設研究大会の分科会グループ討議テーマについて         ・救護施設福祉サービス研修会について         ・全国救護施設実態調査について         ・救護施設職員ハンドブックの改訂について    (第2回)平成23年2月18日(金)/全社協会議室         ・平成23年度事業計画案(調査・研究・研修委員会関係)について         ・全国救護施設実態調査の進捗状況について