全国救護施設協議会 平成21年度事業報告 T.基本方針  本協議会は、平成19年4月に『救護施設の機能強化に向けての指針』をとりまとめ、こ れまで果たしてきたセーフティネットの役割・機能の拡充と、利用者の施設内自立、社会 生活自立の推進をめざし、地域生活移行支援機能のいっそうの強化に向けて取り組んでき たところである。  この実践にあたっては、利用者の希望を踏まえた個別支援計画の策定と計画に沿った支 援の実施が必要不可欠であり、これに基づいての入所施設としての機能の一層の充実はも とより、地域生活移行支援のための事業にさらに積極的に取り組むことが重要である。こ のことから、本年度においては、全国大会等において個別支援計画の策定と活用にかかる 理解促進をすすめるとともに、スーパーバイズ能力の向上に特化した全国レベルの研修会 を実施し人材を養成するなど、個別支援計画にかかる地方研修の実施に資する基礎づくり を一層強化したところである。  また、利用者の地域生活支援の強化をめざし、保護施設通所事業や居宅生活訓練事業等 を一層拡充するべく、本会として国と意見交換を重ねた結果、実施上の条件等が緩和され るなど実施要綱の改正に至る成果を得た。  さらに、利用者の生活上の困難がより多様化・複雑化する中にあって、全国の救護施設 がそれぞれに持つ支援ノウハウを互いに共有しあい、より高い専門性のある支援の提供を 行うため、利用者の自立支援に資する各種支援プログラムを組み入れた福祉サービス研修 会を実施したほか、会報等による情報提供や第三者評価の受審、利用者の要介護認定に関 する課題の調査等を実施した。  これらの成果を踏まえ、本会では、平成22年度においても各地区協議会との連携のもと、 セーフティネットの機能を持つ救護施設として、利用者を主体とした個別支援の推進と自 立支援、地域生活支援事業への積極的な取り組みをすすめ、時代のニーズと期待に応える ための組織的対応を図っていくものである。 U.事業の内容 1.「救護施設の機能強化に向けての指針」を踏まえた機能強化の推進  (1)セーフティネット機能強化のための取り組み   @精神科病院退院者等の受け入れと自立支援の推進   Aホームレス等社会的援護を要する方の受け入れと自立支援の推進    セーフティネットを担う救護施設の機能強化に向けては、その中核となる施設長が、    時代の動きや施設に対するニーズを適切に把握しながら、施設の経営・運営を行っ    ていくことが必要であることから、全国大会の第1分科会において、パネルディス    カッションを行い、地域生活移行やセーフティネット機能強化に係る実践や課題を    提起するとともに、グループ討議により機能強化の共通認識を深めるよう図った。  (2)地域生活支援を推進するための取り組み   @地域生活支援関係事業(保護施設通所事業、居宅生活訓練事業、居宅生活者ショー    トステイ事業等)への取り組みの推進    昨年度より3事業実施上の課題等について、厚生労働省保護課と本会(制度・予算    対策委員長、地域生活支援関係事業連絡会幹事等)の意見交換の場を設定し協議を    すすめるなどしてきたところであり、その結果、保護施設通所事業と居宅生活訓練    事業について、より活用しやすい制度として実施要綱の一部が改正され、平成22年    4月より適用されることとなった。   A地域生活支援関係事業実施施設連絡会の開催    保護施設通所事業等の実施要綱改正の状況に応じて開催することとしていたが、厚    生労働省からの要綱案提示が年度末となったため、開催を延期した。 2.利用者主体の個別支援に向けた取り組みの推進  @個別支援計画書の普及・活用の推進   「利用者主体の個別支援への取り組み」をテーマに、全国大会第2分科会において、   救護施設個別支援計画書を活用した利用者支援のあり方について討議研究を行った。   5施設から実践報告を行い、その後グループに分かれて個別支援計画書導入の成果や   支援計画の実践などについて討議を行った。   また、計画書普及のために希望する施設への計画書の有料頒布を行った。   (21年度実費頒布数:244部)  A施設における個別支援計画に関するスーパーバイズ能力の向上   救護施設個別支援計画書への取り組みが進みつつある中、各施設において個別支援計   画書の理念や目的に基づいた計画が作成されることが重要であることから、個別支援   計画書をチェックし担当者に助言する役割を担う方を対象に、「救護施設個別支援計   画スーパーバイザー研修会」を実施した。なお、研修会の実施にあたり事前に運営打   合せ会を開催した。 3.リスクマネジメント、サービスの質の評価等への取り組みの推進  @リスクマネジメントに対する意識の向上と実践手法の共有   「リスクマネジメントへの取り組み」をテーマとした全国大会第4分科会において、   実践報告を行うとともに、施設における危機管理の体制作りや苦情解決のための取り   組みについて、グループ討議・情報交換を行った。  Aサービスの質の評価に対する意識の向上と実践手法の共有   会報131号(9月発行)に、第三者評価受審状況アンケート(会報130号に添付)の結   果を掲載した。救護施設における第三者評価受審の現状、受審の効果・課題、今後の   動向等について報告し、今後の受審推進に資するよう情報提供を行った。  B利用者の権利擁護に対する意識の向上(「虐待防止の手引き(チェックリスト)」の   試行)   全社協障害福祉部が昨年度作成した「虐待防止チェックリスト」を会員施設に配布し   た。さらに、チェックリストを使用した上での意見等の提出に協力をいただき、次年   度に行われる改訂に向け提案した。 4.全国大会・研修会等の開催  (1)第34回全国救護施設研究協議大会の開催   期 日:平成21年10月1日(木)〜2日(金)   会 場:岡山県岡山市「ホテルグランヴィア岡山」・「ラヴィール岡山」   テーマ:時代のニーズに応える救護施設をめざして   参加者:521名   内 容:@基調報告「時代のニーズに応える救護施設をめざして」        森 好明(全救協会長)       A行政説明「生活保護の現状と課題」        金井正人氏(厚生労働省社会・援護局保護課課長補佐)       B分科会        ・第1分科会「これからの救護施設経営戦略」        ・第2分科会「利用者主体の個別支援への取り組み」        ・第3分科会「地域生活支援への取り組み」        ・第4分科会「リスクマネジメントへの取り組み」        ・第5分科会「利用者のQOL(生活の質)を高める支援」       C特別講演「社会福祉従事者に今、求められること」        江草安彦氏(社会福祉法人旭川荘 名誉理事長)       D記念講演「今日の10代の性を考える―親子で語りあうために」        上村茂仁氏(ウィメンズクリニック・かみむら 院長)  (2)平成21年度救護施設経営者・施設長会議   期 日;平成21年4月27日(月)〜28日(火)   会 場;東京都内・全社協会議室   参加者:124名   内 容:@基調報告 森 好明(全救協会長)       A講義「施設入所者の権利擁護〜虐待防止の視点から」        平田厚氏(明治大学法科大学院教授・弁護士)       B討議・情報交換        @)「救護施設の機能強化に向けての指針」を受けての各施設の取り組み        A)現在救護施設において、課題となっていること  (3)平成21年度救護施設福祉サービス研修会   期 日;平成21年12月3日(木)〜4日(金)    会 場:東京都内・全社協会議室    参加者:101名   内 容:@講義1「昨今の貧困、生活保護の現状と課題」        蟻塚昌克氏(立正大学教授)       A講義2「地域における自立支援の取り組み」        佐久間裕章氏(NPO法人ふるさとの会)       B講義3「自殺に傾いた人を支えるために」        川野健治氏(国立精神・神経センター精神保健研究所 自殺予防総合対策        センター 自殺対策支援研究室長)       C講義4・演習「利用者の自己実現を支援するために」        福山和女氏(ルーテル学院大学教授)        萬歳芙美子氏(ルーテル学院大学非常勤講師)        荻野ひろみ氏(文教町クリニックカウンセラー)  (4)平成21年度救護施設個別支援計画スーパーバイザー研修会   期 日:平成21年11月4日(木)〜6日(金)   会 場:東京都内・全社協会議室   参加者:112名   内 容:@講義1「救護施設個別支援計画書の理念と目的」        前嶋 弘(救護施設における個別支援計画に関する検討会委員)       A講義2「個別支援計画書スーパーバイズのポイント」        守家敬子(救護施設における個別支援計画に関する検討会委員)       B演習T「よりよい計画書にするためのチェックと助言」       C演習U「具体化されなかったニーズの具体化検討」       D演習のまとめ   <運営打合せ会>      平成21年6月25日(木)/全日通ビル7階会議室       ・研修会のプログラム、内容、役割分担について         ・各地区研修会指導者向けのマニュアルについて  (5)第35回全国救護施設研究協議大会(九州地区)の開催準備   平成22年10月28日〜29日、沖縄県那覇市の沖縄ハーバービューホテルクラウンプラザ   において開催することとなった。 5.協議会組織の強化  (1)各地区救護施設協議会組織の活動の促進   全国レベルの活動との連携を強化しつつ、各地区協議会における諸活動の円滑な運営   を図った。また各地区の大会において全救協より中央情勢報告を行い、直近の情報提   供に努めた。   《地区大会開催状況》    北海道地区  6月16日(火)〜17日(水)/北海道函館市    東北地区   6月10日(水)〜11日(木)/岩手県花巻市    関東地区   7月2日(木)〜3日(金)/静岡県浜松市    北陸中部地区 7月16日(木)〜17日(金)/山梨県甲府市    近畿地区   6月11日(木)〜12日(金)/大阪府堺市    中国四国地区 6月4日(木)〜5日(金)/山口県下関市    九州地区   7月9日(木)〜10日(金)/宮崎県宮崎市  (2)平成21年度永年勤続功労者表彰の実施   第34回全国救護施設研究協議大会開会式(10月1日、岡山市)において76名の表彰を   行った。  (3)組織・財政の充実・強化  (4)平成21年度「全救協便覧」の発行 6.広報・情報提供活動の強化  (1)会報『全救協』の発行   社会福祉制度・施策の動向、本会活動、各地区の動向、救護施設における実践報告、   全国大会の概要等について、全国の関係者に広報するため会報『全救協』を発行した。   《発行状況》    @130号(平成21年4月1日)     特集:罪を犯した支援を要する障害者に、救護施設は何ができるか    A131号(平成21年9月25日)     特集:平成21年度全国救護施設協議会総会・役員改選報告    B132号(平成21年12月25日)     特集:第34回全国救護施設研究協議大会報告  (2)制度・施策関連情報の提供   障害者制度・施策に関する情報を、『全社協障害福祉部ニュース』により提供した   (26回発行)。   会員施設に対しては、会報「全救協」の“動向”のコーナーにより、関連制度・施策   に係る情報提供を行った。  (3)全救協ホームページの充実   ホームページを随時更新し、全救協の事業や救護施設に関する情報提供を行った。  (4)救護施設PRパンフレットの改訂   PRパンフレット改訂の要否等について総務・財政・広報委員会において検討を行い、   掲載データの更新を行う等の改訂版を作成した(15,000部)。平成22年2月に会員施   設に見本を送付した。   また、希望する施設への有料頒布を行った。   (改訂版パンフレット21年度実費頒布数:8,500部 <100部単位で頒布>) 7.制度・予算対策活動の推進  (1)救護施設をめぐる制度等の改善および予算要望に向けた対応   これまでに各地区より出された制度改善要望等について、制度・予算対策委員会にお   いて引き続き内容の精査を行った。さらに、救護施設における精神障害者等の地域生   活移行支援の推進に向けて厚生労働省と意見交換を行った。その結果、保護施設通所   事業と居宅生活訓練事業については、より柔軟に運用されるよう実施要綱の一部が改   正された。   また、平成22年度の厚生労働省概算要求項目として、救護施設を活用した精神障害者   退院促進事業(措置費による事務費支弁とする居宅生活者ショートステイ事業の再編   を含む)と救護施設への精神保健福祉士の加配があげられたが、年末に閣議決定され   た政府予算案には盛り込まれなかった。そこで、引き続き改善を求めるべく、事業の   拡大と措置費による事務費支弁とする居宅生活者ショートステイ事業の再編と精神障   害者の入所状況に応じた精神保健福祉士配置加算の創設について、厚生労働省への平   成23年度予算編成に向けた要望書(案)を作成した。   また、要介護認定の受けにくさが多くの救護施設において共通の課題となっているこ   とから、その実態把握を行うためアンケート調査を実施した。その結果を踏まえ、さ   らに検討を進めることとしている。  (2)心神喪失者等医療観察法への対応   引き続き動向を注視し、必要な対応を行うこととしている。  (3)全国社会福祉協議会・政策委員会における活動との連携   全国厚生事業団体連絡協議会を通じて連携を図った。 8.調査研究活動の推進  (1)全国救護施設実態調査の検討   現状の2年毎の調査実施や膨大な調査項目については負担感が大きいことから、適当   な実態調査実施の間隔や調査項目について検討を行った。平成22年度に調査実施に向   けてさらに検討を進める。  (2)情報収集アンケートの実施と活用   救護施設利用者が要介護認定を受ける際の課題等について実態把握を行うため、会報   「全救協132号」の送付に併せてアンケート調査を実施した。  (3)「救護施設職員ハンドブック」の改訂   昨年度に引き続いて作業委員会を開催し内容について検討を行い、役割分担をして原   稿執筆を行った。平成22年度の刊行に向けて作業を継続している。   <作業委員会開催状況>   (第2回)平成21年6月24日(水)/全社協会議室        ・「救護施設職員ハンドブック」の構成及び内容について        ・役割分担について   (第3回)平成21年10月21日(水)/商工会館会議室        ・「救護施設職員ハンドブック」の構成及び内容について V.会務の運営  会務を進めるために、以下の会議を開催した。 1.総会の開催  期日; 平成21年4月27日(月)  会場; 全社協会議室  出席状況: 出席施設数 109、委任施設数 68、欠席施設 7 2.理事会の開催   (第1回)平成21年4月27日(月)/全社協会議室       ・平成20年度事業報告案、決算案について       ・総会の運営について       ・第34回全国大会の分科会について    (第2回)平成21年9月30日(水)/岡山市・ホテルグランヴィア岡山       ・全国大会の運営について       ・平成21年度事業の進捗状況報告および今後の推進について        * PRパンフレットの改訂について        * 救護施設に関する予算・制度改善要望事項への対応について        *「救護施設職員ハンドブック」の改訂について        * 救護施設個別支援計画スーパーバイザー研修会について        * 救護施設福祉サービス研修会について  (第3回)平成21年12月11日(金)/全社協会議室       ・第34回全国救護施設研究協議大会報告       ・制度・予算対策委員会報告       ・平成21年度研修会実施状況報告  (第4回)平成22年3月5日(金)/全社協会議室       ・全国救護施設研究協議大会の企画・運営の所管委員会について       ・平成22年度救護施設経営者・施設長会議について       ・要介護認定を受ける際の課題について       ・全国救護施設実態調査について       ・「救護施設職員ハンドブック」について       ・平成21年度事業進捗状況及び補正予算(案)について       ・平成22年度事業計画(案)及び予算(案)について 3.専門委員会の開催  各委員会活動を積極的に推進するために、以下のとおり開催した。  (1)総務・財政・広報委員会   (第1回)平成21年6月21日(月)/全社協会議室        ・第34回全国救護施設研究協議大会について        ・会報「全救協」の内容について        ・PRパンフレットの改訂について   (第2回)平成22年2月22日(月)/全社協会議室        ・平成21年度事業進捗状況及び補正予算案について        ・平成22年度事業計画案及び予算案について        ・第35回全国救護施設研究協議大会について        ・平成22年度経営者・施設長会議の企画について  (2)制度・予算対策委員会   (第1回)平成21年7月6日(月)/全社協会議室        ・昨年度各地区から出された予算・制度要望事項について   (第2回)平成21年10月20日(火)/全社協会議室        ・昨年度各地区から出された予算・制度要望事項について   (第3回)平成22年2月15日(月)/全社協会議室        ・平成22年度事業計画(案)について        ・要介護認定を受ける際の課題について  (3)調査・研究・研修委員会   (第1回)平成21年6月25日(木)/全日通ビル会議室        ・第34回全国救護施設研究大会の分科会グループ討議テーマについて        ・救護施設個別支援計画研修会について        ・救護施設福祉サービス研修会について        ・全国救護施設実態調査について        ・救護施設職員ハンドブックの改訂について   (第2回)平成22年2月10日(水)/全社協会議室        ・平成22年度事業計画(案)について        ・第35回全国救護施設研究協議大会分科会の内容について        ・全国救護施設実態調査について